この記事では、セントジョーンズワート(Hypericum perforatum)の育て方や活用のヒントになる情報を解説します。
このハーブはメディカルハーブの中で最も研究されている植物の一つで、それほどまでにパワフルなハーブであります。今回はセントジョンズワートの魅力として、メディカルな側面も紹介しながらも、そのほか家庭や趣味でも楽しめるような活用のヒントなどもご紹介していきます。
セントジョンズワートとは?
セントジョンズワート/セイヨウオトギリソウ(Common St. John’s wort[Hypericum perforatum])
生物分類:オトギリソウ科オトギリソウ属 |
育ち方:多年草 |
草丈:50~100cm |
開花期:6〜8月 |
原産地:ヨーロッパ |
主な用途:薬用・鑑賞・オイル・料理・ティー |
使用部位:地上部(花・葉・茎) |
セントジョンズワート(Hypericum perforatum)は、オトギリソウ科の多年草で、ヨーロッパが原産のハーブです。現在では気候の穏やかな地域でも見られます。
セントジョンズワートという名前の由来は、聖ヨハネの祝日(6月24日)頃に花が咲くことから来ました。オトギリソウ属には370種以上もあるため、区別するために、「コモン(common:一般的な)セントジョンズワート」「パーフォレイト(perforate:穴の開いた)セントジョンズワート」とも呼ばれています。
この植物の特徴は、葉に小さな穴が開いているように見える透明な油点があることです。これらの油点には、セントジョンズワートの有効成分が含まれています。この成分からセントジョンズワートは、古くから民間療法として様々な症状に使用されてきました。特に、精神的な不調や皮膚のトラブルに対して効果があると言われています。
現代では、サプリメントやハーブティーなどの形で広く利用されており、自然療法の中でも人気の高いハーブの一つとなっています。
セントジョンズワートについてと活用方法
歴史・名称の由来・人との関わり
セントジョンズワートは古くからキリスト教と深い関わりのあるハーブです。
“セントジョン”とは、キリストに洗礼を授けた洗礼者聖ヨハネのことです。“ワート”は古英語で「草」や「植物」を意味します。つまり、直訳すると「聖ヨハネの草」というわけなのですが、これはこの植物が聖ヨハネの誕生日とされる6月24日頃に花を咲かせることが由来になっています。ヨーロッパの伝統では、この日に摘んだセントジョンズワートには特別な力があると信じられています。 この時期の正午、太陽の力が最大になったときに収穫すると治癒力が最も強いといわれ、夏至祭にも使われていました。また花を絞ったときに出る赤みを帯びた汁が、ヘロデ王によって斬首されたヨハネの血にも例えられているようです。
また、フランス語の名前には「すべてを癒やす」という意味があり、十字軍の聖地エルサレムの戦場で傷の手当てに使われたそうです。16世紀ごろ中世ヨーロッパでは魔よけとされ、窓やドアにつるしておくと災害を免れるという言い伝えがありました。
そして19世紀になると、科学的なアプローチでの研究が進みました。特に、ドイツでは医療用植物として注目を集め、うつ病の治療に使われ始めます。 現代では、セントジョンズワートは世界中で使われています。特に欧米では、軽度から中程度のうつ症状に対する自然療法*として人気があります。日本でも、最近になって注目を集めています。(*もし治療目的での接種するのであれば必ず事前によく調べ、かかりつけの病院がある場合には必ずお医者様に相談してからにしましょう。)
精神的・身体的有用性
セントジョンズワートの有用性で現代最も有名なのは不安および軽度から中等度の抑うつの症状を緩和する作用でしょう。
抑うつは現代病というわけではなく、古代ギリシャ時代にも病気と認識されていました。古代の賢人であるヒポクラテスは抑うつの症状を「長期間つづく不安や落ち込み」と定義しています。そしてこの時代は、4種類の体液のバランスが乱れると、抑うつになると言じられていたようです。(4種類の体液は性格型を決定するとされた。多血質一楽観的で気苦労がない、粘液質一思慮深く忍耐強い、黒胆汁質一真面目でふさぎ込みがち、黄胆汁質一落ち着きがなく怒りっぽい)
そして古代ギリシャ人たちは、セントジョンズワートを抑うつの治療に用いました。
現代の科学的な研究でも、セントジョンズワートのエキス剤には、穏やかな抗うつ剤と似た作用があることが示唆されています。実際に欧米では、軽いうつ病の治療薬として広く使われているようです。日常生活に支障がなくても、長期の抑うつに悩む人には、セントジョンズワートがよく適応するでしょう。
また抑うつ以外にもセントジョンズワートには、このような効果も期待できるそうです。
- 不安やストレスの軽減
- 更年期症状の緩和
- 傷の治癒促進
- 炎症の抑制
- 抗酸化作用
もちろん、個人差はありますし、重度の症状には医師の診断が必要です*。非常にパワフルなハーブですので、接種には十分にお気をつけください。
*繰り返しになりますが接種する際はご自身でよく調べ、かかりつけがある場合はそのお医者様によくご相談ください。当サイトでは一切の責任を負いません。
活用方法のアイデア
家庭でのセントジョンズワートの活用法には、さまざまなアイデアがあります。
セントジョンズワートの利用部位は地上部全体を利用できます。
ただし部位によって香りに差があり、葉はバルサム系(針葉樹のマツやモミなどの香り)が、花はレモンの香りがあります。利用用途に合わせてお好みで使い分けてみてくださいね。
セントジョンズワートの育て方
古くからハーブとして利用され、特に心の健康に良いとされてきたセントジョンズワートですが、育てるのは比較的簡単になります。生育旺盛で丈夫なので育てやすく、ガーデニング初心者の方でも、簡単に育てられる植物だと思います。ぜひチャレンジしてみてくださいね。
セントジョンズワート/セイヨウオトギリソウ(Common St. John’s wort[Hypericum perforatum])栽培カレンダー
1 | 3 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |
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種まき | ○ | ○ | 中 | ◎ | ||||||||
植付け | ○ | ○ | 中 | ○ | ||||||||
株分 | ○ | ◎ | ||||||||||
切戻 | 20~30 | 20~30 | 花後 | 花後 | ||||||||
追肥 | お礼 | お礼 | ||||||||||
開花 | * | * | * | |||||||||
収穫L,St* | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
収穫F** | 夏至◎ | ○ | ○ |
種まき時期:9中〜10月(3〜4月) |
植え付け時期:3〜4、10中〜11月 |
株分け適期:10月(4月) |
開花時期:6〜8月 |
切り戻しと摘心:草丈20~30cmほどで先端を切り戻し。花後に半分くらい切り戻し。 |
追肥:控えめ。植え付け時に元肥があればほとんどいらない。お礼肥をあげるぐらいで。 |
収穫(葉):株がしっかり育っていれば随時収穫OK。 |
収穫(花):開花期。特に夏至がオススメ。 |
冬越し:◎。冬には地上部が何もなくなるが、春に芽吹く。 |
生育環境[基本の環境・冬越し・夏越し]
日向〜半日陰の環境を好みます。日陰でも育ちますが、花つきが悪くなる可能性があるので注意してください。また、風通しの良い場所も重要です。風通しが悪いと病害虫が発生しやすくなります。
温度は15~20度くらいでよく育ちます。
冬の間は地上部がなくなりますが、根は生きていますので春暖かくなってきたら新芽が出ます。耐寒性は強いので特に対策は必要ではありません。
また乾燥には強いのですが、真夏の強い日差しで葉が焼けることがあるので、必要に応じて遮光ネットなどで保護しましょう。
水やり
鉢植えの場合:土の表面が乾いたらたっぷりと水を与え、鉢底から水が流れ出るまでしっかりと浸透させましょう。ただし、やや乾燥した土壌を好むので、過湿になりすぎないようにしましょう。
地植えの場合:根付けば特に必要ありません。
土壌環境
排水性の良い土を使用することが重要です。また乾燥した、ややアルカリ性の土壌を好みます。けれど、順応力は高いので、厳密に整えなくても大丈夫です。
植え付け
植え付けの適期は、霜の心配がなくなった春:3〜4月または秋:10月中旬〜11月です。
地植えやプランター、鉢植えも可能ですが、セントジョーンズワートは地下茎をどんどん伸ばして横に広がっていくので、地植えにすると環境次第ではあっという間に想定以上の広がりを見せるかもしれません。セントジョンズワートだけを植えるための枠を埋め込んでから植える「枠植え」など工夫した方が良いでしょう。
プランターはあまり大きくなくても育てられます。6号鉢(直径18センチ)以上なら良いでしょう。
肥料
肥料は控えめに。植え付け時に元肥を与えたならばそれ以降はほとんどいりません。あげるならお礼肥をあげるぐらいで十分です。
もし生育が悪い場合は、成長期(4〜8月)に薄い液体肥料を月に1~2回与えると良いでしょう。ただし秋は肥料は控えめにし、植物が冬に向けて準備するのを助けます。
過剰な施肥は避け、控えめに与えることがコツです。
切り戻し
草丈が20センチから30センチぐらいになったら枝の先端を切り戻します。この切り戻しによって、脇芽が出てこんもりと見栄えが良くなります。
また花後に、草丈の半分ほどで切り戻してください。
収穫[地上部]
セントジョンズワートは地上部全体(葉・茎・花)が活用できます。
花は、開花期ならばいつでも収穫可能です。ただし最も日が長くなる夏至の日が治癒力が最も高い作用が期待できる状態で収穫できると伝承する記録があります。必要に応じて、葉や花をつけた茎先を先から7cmくらい、ハサミで切って収穫してください。
花がついていなくても葉や茎も利用できるので、株がしっかり育っているならば、随時収穫してもかまいません。株の根元から刈り取り、風通しのよい場所に逆さまにして乾燥させることで保存もできます。
増やし方[株分け]
セントジョンズワートの株を増やしたい場合は、環境が良ければ地下茎で横にどんどん根を張り広がるため、株分けで増やす方法が簡単です。春と秋の2回可能ですが、秋の方が向いています。
植え替えも兼ねて掘り上げたら2芽から3芽ぐらいずつに株分けをしましょう。
最後に
今回はセントジョンズワート/セイヨウオトギリソウ(Common St. John’s wort[Hypericum perforatum])の活用のヒントと育て方についてご紹介しました。
セントジョンズワートを紹介する上で「抗うつ」の作用は必ずと言っていいほどついてきます。それも古代ギリシャから使用され、現代でも科学的に有効であるとされているように、歴史にも科学的にも裏打ちされているまさにパワフルなハーブです。それほどであるからこそ特に、(何度も言いますが)薬効を求めて服用される場合は必ず注意してください。特にお薬を飲んでいる方は要注意。必ず専門家に相談してくださいね。
そんなセントジョンズワートも育てるのは比較的簡単です。ぜひ実際に植物を育て、身近に触れて、そのパワーを感じてみてくださいね。
また、セントジョンスワートについて質問や、実際に育ててみた感想などありましたらコメントくださいね。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
素敵なハーバルライフを!
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